大林宣彦監督が、25年ぶりりにセルフリメイクした「転校生 さよならあなた」を観た。
斜めに傾いた画面に代表される凝ったカット割り、全編を通じて流れるクラシック音楽、くさいセリフ回し、大林宣彦ワールド全開。これらの要素のどれか一つでも欠けると、全く駄目な作品になってしまうと思う。その点、大林監督は、すごいです。いいとか悪いとか、普通の映画としては評価できない次元にいってしまってる。
どこか古臭い言葉遣いとか、一美の恋人の弘君が、堂々と愛を主張するシーンとか、現代の映画としてみると全くおかしいのだけれど、大林ワールドの中では、全てが許せてしまう。
最近、この手のセルフリメイクが流行っている。「犬神家の一族」とか。「犬神家の一族」は、前作と全く同じストーリーとセリフ、カメラのカット割までほぼ同じという徹底ぶりだった。
一方、「転校生」は、一夫と一美が、入れ替わるシーンからして違う。前作の神社の境内の階段から、転げ落ちて入れ替わるシーンは特に有名で、多くのドラマや映画で引用されている。最近では、「パパとムスメの7日間」でも、舘ひろしと新垣結衣が転げ落ちていた。関係ないけど、舘ひろしの演技のがんばりようはすごいね。
本作では、舞台が尾道から長野に変わり、一美の家は蕎麦屋をやっている。一夫と一美が二人で、山の中にある池に蕎麦をうつための水を汲みに行き、そこで二人で池におちて入れ替わる。導入部分からの違いはあるが、それでも前半は前作と同じようにコメディタッチで展開していく。後半、一美が難病にかかっていることがわかり、物語は一変して、“死”が重要なテーマとして入り込んでくる。
もう一つ本作品を特徴づけているのは、一美の恋人である弘君の存在だ。弘君は狂言回し的な役割を担っていて、物語に方向性をつけて導いていく。物語の前半で、哲学好きの弘君が、一美に読めと手渡す、キルケゴール作の「死に至る病」。物語の後半で、一美になった一夫が読んで、死を考えることは、逆に生きていくことの大事さを考えることでもあると気付く。
僕は、特に後半部分がかなり好き。一見、流行の難病物と捉えてしまいがちだけど、病名が全く明かされないところからして、他の作品とはちょっと違うと思う。二人は死を意識しながらも、死に対する悲壮感は全くといっていいほど無い。
新宿ガーデンシネマで観たが、小学生くらいの子供連れをちらほら見かけた。前作を観た親が子供を連れてきたのだと思うが、今回の内容は、子供にはちょっと難しすぎて、理解できないと思う。というか、大人でも理解できない人が多いと思う。と書いている、自分もほんとに監督の意図を理解できているかどうかと言われるとかなり怪しい。
一美を演じた蓮佛美沙子は、いかにも大林監督好みの顔立ち。小林聡美と比べると、ずっと女性を感じさせるのだけど、いやらしくならないぎりぎりのところで踏みとどまっていたと思う。特に、ピアノの弾き語りは、すごく清らかな感じで良かった。エンドロールでは同じ曲を歌手の人が歌っているのだけれど、蓮佛美沙子の歌の方が好き。
一夫を演じた森田直幸は「酒井家のしあわせ」で初めてみて上手いなぁと思ったけど、今回もその印象は変わらなかった。
見る人をすごく選ぶので、客入りはあまり良くない様だけど、個人的には好きな作品。そういえば、大学生のとき友達3人で昼ごはんを食べた後、何気なく「ふたり」の話になって、尾道に行ってみたいなぁということになった。その日の夜には、友達の車で出発していた。学生だからこそできた技。今回の長野の風景も良かったので、また行ってみたい。
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